基本的にG20は波乱なく通過する見通しであり、G20でのお墨付きを受けることができれば、日銀の大胆な金融緩和を背景とした円の先安感が再興し、円は再び売られ易い地合いに転じると考えられる。
出所:FX museum米国の地区連銀経済報告(ベージュブック)が17日に公表され、
景気に対する評価が「やや上方修正」された。この報告書は、FOMC
(米連邦公開市場委員会)開催の2週間前に公表されFOMCでの議論の
たたき台となるため、今後の金融政策を予測する上で重要な判断材料
とされているが、最近発表された米経済指標は弱い結果が目立って
きており、ベージュブックの評価と経済データとが対照的な内容と
なっているところがやや気に掛かる。
(前回から悪化した主要な米経済指標:4月発表分)
・3月ISM製造業景況指数(結果51.3、前回54.2)
・3月ISM非製造業景況指数(結果54.4、前回56.0)
・3月非農業部門雇用者数(結果8.8万件、前回26.8万件
↑23.6万件から上方修正)
・2月卸売在庫(結果−0.3%、前回0.8%←1.2%から下方修正)
・3月小売売上高(結果−0.4%、前回1.0%←1.1%下方修正)
・3月消費者物価・前月比(結果−0.2%、前回0.7%)
・3月鉱工業生産(結果0.4%、前回1.1%←0.7%から上方修正)
・4月フィラデルフィア連銀製造業景況指数(結果1.3、前回2)
前回、FOMCのバーナンキ議長会見で、「最近の米経済は春先に落ち込む
傾向にあり、今年も落ち込むなら対応が必要である」と述べており、
直近の経済指標下振れはFRBが想定しているリスクの範囲内といえよう。
ただ、QEの縮小および停止の前提条件となる景気動向が停滞している以上
FOMCで出口戦略議論を進めることは難しくなる。
他方、開催中の20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議では、
日本の積極的な緩和政策に主要国の理解を得ているものの、前回のG20
よりも円安が進んでいることから新興国による円安牽制発言の可能性は残る。
基本的にG20は波乱なく通過する見通しであり、G20でのお墨付きを受ける
ことができれば、日銀の大胆な金融緩和を背景とした円の先安感が再興し、
円は再び売られ易い地合いに転じると考えられる。
一方で、最近話題を集めている金相場は、2002年頃から約10年間上昇傾向を
示した後、長期の下落トレンド入りの可能性があり、歴史的に見て逆相関の
値動きを示すドルの上昇をサポートする可能性がある。
その他、ドル円は日米長期金利差の動向に沿った値動きを続けており、
日米双方の長期金利に影響を与える可能性がある材料には引き続き
注目であろう。
欧州では、随一の経済大国であるドイツ経済の弱さが顕著となっている
ことや、同国の格下げの噂が流れている他、イタリア議会で2度の投票
でも次期大統領を選出することがでなかったことから同国の政局混迷が
意識されユーロ相場の重石となっている。
また、タカ派で知られるバイトマン独連銀総裁が欧州中央銀行(ECB)
の利下げの可能性に言及したこともユーロ相場を一層重くさせる要因と
意識されよう。