これが私の「投資の王道」

赤羽 久子さん(仮名・女性39歳)
職業 会社員
投資歴 9年
投資資金 500万円

 赤羽さんは日本の不況真っただ中の90年代後半に株式投資を始めた。対象となる銘柄は、すべて東京市場。日本経済の復活を信じて投資したとはいえ、当初数年間は後悔することもあり、すべて売り払ってしまいたい衝動にかられたこともしばしばあったという。

そして、昨年来の株価回復。「辛かったけれど、信じて待っていてよかった」という気持ちなのだという。結果的には個人投資家として成功の道を歩んでいる赤羽さんだが、投資に「王道」はあるのだろうか。

●赤羽さんのご職業は。

 先月から金融関係を得意とする通訳派遣会社に勤務しています。日本語でも同じですが、通訳の場合も語学力プラス、それぞれの分野の専門性や知識・語彙が求められます。帰国子女ということで英語力自体は問題ありませんでしたが、日本で最初に就職した不動産会社では、かなり高い専門知識を要求され、力不足ゆえに苦い思いもしました。プライベートで株式投資を行ってきたことと、日本では金融の分野での通訳の需要が高いことを知り、自分の興味のある道を究めたいと思ったのが、現在の会社に就職する動機となりました。

●投資歴についてお聞かせ下さい。

 私が株式投資を始めたのは親しい友人の影響です。当時、日本はバブル崩壊後の出口の見えない低迷期にありました。山一證券が自主廃業したり銀行が潰れたり統廃合したりと、それまでの常識では信じがたいような出来事が相次いだ時期でしたが、「長期的に腰を据えて投資するなら今がチャンス」と判断しました。
 でも、日本の不況は数年経っても相変わらずで、株価も低迷したまま。最初はビギナーズラック的に少し利益を出したのですが、「私には投資のセンスがあるかも」などとうぬぼれたのが間違いでした。投資に向いているなんて錯覚だとすぐに気付いたのはよかったのですが、いつまで待っても明るい話題が出てこない。ある時、参加したセミナーで講師の方に聞きました。「投資の王道」を教えて下さい、と。
 
●そこでどんな答が返ってきましたか。

 結論からいうと、「王道なんてありません」というものでした。強いていうなら、王道は人によって違うものだ、と。最初はがっかりしましたよ。その時は経験も浅く、早く出口や答が欲しいばかりに、自分でじっくり考えるよりも手っ取り早く、これさえ押さえておけば大丈夫というような、明確なものを専門家の方の答として欲しいと思っていましたから。でも、結局は自分で納得して自身で判断して、そこに時間なり金銭なりを積んで勉強しなければ何も身に
付かないと分かりました。
 いま振り返ると、私がその時求めていたことは一夜漬けの暗記のようなものだったかもしれません。理屈はいいからとにかく答えが欲しい、儲けるコツを今すぐに知りたいんだと。ですが、自立した投資家として自分でしっかり考えて投資を行っていくには、情報を集めたりそれを分析したりする力や経験、生活者としての感覚なども必要だと思います。少なくとも一夜漬けでは決して身には付かないんですね。損をするのは誰だって嫌です。でも、授業料と割り切れば決して無駄にはならないはずです。もし人に投資の王道はと問われたら、「損して得取れ」と言うでしょうね。必要な時に損切りできることはとても大切です。また、一時的に損を出しても長い視点でみたら得する近道ということもあります。
 
●その後、結果はいかがでしたか。

 相場はつくづく心理戦だと思うのは、同じ現象が立場によって全く違う感じ方をするということですね。例えば、買う時は当然、将来もっと高くなると思って買うわけです。ところが、自分の思い通りに値上がりしないことがあります。どんどん下がってくると焦ります。損切りは早いうちがいいと言いますが、当事者になるとそう涼しい顔ではいられなくなります。ですから、客観性をもった判断をあらかじめ用意しておくのがいいですね。どこまで上昇したら売るとか、どの値段で買うとか、冷静な間に決めておくのです。
 下落して焦るのとは逆のこともありますよ。一応、そこそこ利が乗って売った。ところが、自分が売った後にもっと値上がりしたりすると、ちょっと後悔するんですね。でも、それは結果的に分かることであって、もしそのタイミングで売らなければ、利益は出せなかったかもしれません。そんなことを繰り返していくと、いつもドンピシャの底で買って天井で売るなんてことはまず無理だということが分かってくきます。いまのところ、結果としては数十万円から始めてここまで利益を膨らませてきましたから、まずまずと思っています。次は分散が課題ですね。

●どんな投資対象に興味がありますか。

 為替です。まだ、多くに分散するほど資金が多いわけではありませんが、対象が2、3でもあれば、一極集中よりはリスクが少ないはずです。命綱は太いほうがいい。1本の綱よりも2本、3本で編んだ綱のほうが丈夫で切れにくいのと同じです。
 為替は、金利に着目して新興国や資源国の通貨という選択肢もありますが、私たち個人投資家のようにいち早く多くの情報を仕入れられない場合は、円、ドル、ユーロという基本的な通貨に対象を絞ったほうがいいと思います。これだけでもオリンピックや政治的なイベントなどで結構動きますからね。もちろん、しっかりと自己責任の範囲でできるのであれば、いろいろな通貨ペアを試してみるのもいいと思います。
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